いろは歌(うた)

 「いろは歌」は,涅槃経の中の「諸行無常 是生滅法 生滅滅已 寂滅為楽」を,弘法大師が庶民にもわかりやすいように作歌したものだと伝えられています。

 涅槃経の四句の偈文の意味はおよそ以下の通りです。
 諸行無常…… この世のすべてのものは常に移り変わり,同じ
          状態が続くことはない
 是生滅法…… 生きているものは,生と死を繰り返し,変化して
          ゆくのが真理である
 生滅滅已…… 生と死の繰り返しがなくなると,迷いや煩悩が
          なくなり悟りの境地に至る
 寂滅為楽…… 悟りの境地に至って,初めて真の安楽が得ら
          れる

 これを元に,弘法大師が作ったとされるのが,以下の歌です。
 色は匂えど散りぬるを (諸行無常)
 わが世誰れそ常ならむ (是生滅法)
 有為の奥山けふ超えて (生滅滅已)
 浅き夢みし酔ひもせす (寂滅為楽)

 これをひらがなで書き表すと,
   いろはにほへとちりぬるを
   わかよたれそつねならむ
   うゐのおくやまけふこえて 
   あさきゆめみしゑひもせす(ん)
 この歌はひらがな四十七文字(「ん」を入れると四十八文字)が一文字ずつすべて使われていることで有名です。