娑婆(しゃば)で見(み)た弥次郎(やじろう)

 「娑婆」とは様々な煩悩から脱することのできない衆生が,苦しみに耐えて生きている所のことで,現世や俗世界を指します。
 知っている人に声を掛けられたとき,知らないふりをすることを表わします。

 ある僧が佐渡で生きながら埋められて往生すると言ったが,実際には抜け穴から逃げ出して越後に渡っていた。すると以前召し使っていた弥次郎という男に偶然出会って声を掛けられた。はじめのうちは知らぬ顔をしていたがそれも出来なくなって,「げにもげにもよく思い合わすれば娑婆で見た弥次郎か。」と言ったという話からできた言葉とされています。

 「弥次郎」は,「弥三郎」「弥四郎」「弥十郎」などに変えられて言われることもあります。